整備管理者とは

一般貨物自動車運送事業の経営許可申請をする際にあたり必ず必要となってくるのが、

  1. 常勤の役員
  2. 運行管理者
  3. 整備管理者
  4. 事業用トラック5台
  5. 営業所
  6. 車庫

この1~6は必ず必要になってきます。
その中でも今回は③整備管理者にスポットを当ててみていきたいと思います。

整備管理者制度について

1. 整備管理者制度の目的とは?

自動車の安全性の確保と郊外を防止するためには、自動車の使用者が自主的な点検と必要に応じた整備を確実かつ適切に行い、維持管理をしなければなりません。
しかしながら、自動車運送事業者等のように、多数の自動車を保有していたり、バス等のように特殊な自動車については、自動車の使用者自らが自動車を点検・整備することが困難となる場合が多く、そうかといって、これらを自動車の運転者に任せることは、自動車の点検・整備が確実に行われないことになりかねません。
整備管理者の制度は、このような問題に対処するため、自動車の使用者が、自動車の点検・」整備・管理に関し、一定の要件を備える者を整備管理者して、選任し、その者に対して、点検・整備に係る管理に関する権限を付与することにより、責任体制を確立し、もって自動車の安全性の確保と公害防止を図ることを目的としています。

2. 整備管理者の選任

整備管理者の選任は、次の表に掲げるとおり、自動車の使用者が自動車の種類、乗車定員、使用車両数等に応じて使用の本拠ごとに選任し、選任の日から15日以内に、管轄する運輸支局へ届出なくてはなりません。また、これらを変更したときも同様です。

事業の種類自動車の種類整備管理者の選任を要する使用の本拠
事業用バス (乗車定員11人以上)1両以上の使用の本拠ごと
トラック・ハイタク 乗車定員10人以下5両以上の使用の本拠ごと
自家用バス 乗車定員11人以上乗車定員30人以上は1両以上の使用の本拠ごと
大型トラック等 (車両総重量8トン以上)5両以上の使用の本拠ごと
レンタカー及び貨物軽自動車運送事業者バス 乗車定員11人以上1両以上の使用の本拠ごと
大型トラック等 (車両総重量8トン以上)5両以上の使用の本拠ごと
その他の自動車 乗車定員10人以下 車両総重量8トン未満10両以上の使用の本拠ごと

根拠法令

(整備管理)
第五十条 自動車の使用者は、自動車の点検及び整備並びに自動車車庫の管理に関する事項を処理させるため、自動車の点検及び整備に関 し特に専門的知識を必要とすると認められる車両総重量八トン以上の自動車その他の国土交通省令で定める自動車であつて国土交通省令 で定める台数以上のものの使用の本拠ごとに、自動車の点検及び整備に関する実務の経験その他について国土交通省令で定める一定の要 件を備える者のうちから、整備管理者を選任しなければならない。
2 前項の規定により整備管理者を選任しなければならない者(以下「大型自動車使用者等」という。)は、整備管理者に対し、その職務 の執行に必要な権限を与えなければならない。

道路運送車両法

道路運送車両法施行規則

(整備管理者の選任)
第三十一条の三 法第五十条第一項の国土交通省令で定める自動車は、次の各号に掲げるものとし、同項の国土交通省令で定める台数は、 当該各号に定める台数とする。
一 乗車定員十一人以上の自動車(次号に掲げる自動車を除く。) 一両
二 乗車定員十一人以上二十九人以下の自家用自動車(道路運送法(昭和二十六年法律第百八十三号)第八十条第一項の許可に係るもの を除く。) 二両
三 乗車定員十人以下で車両総重量八トン以上の自家用自動車及び乗車定員十人以下の自動車運送事業の用に供する自動車 五両
四 貨物軽自動車運送事業の用に供する自動車及び乗車定員十人以下で車両総重量八トン未満の自家用自動車であつて、第二号の許可に 係るもの 十両

3. 整備管理者の資格要件

整備管理者は自動車の点検整備等、自動車の管理に関する業務を的確に処理する必要があることから、自動車の安全性などを確保するための整備技術、自動車の管理能力などの一定の資格要件を備えていなければなりません。

 根拠法令

道路運送車両法施行規則
(整備管理者の資格)
第三十一条の四 法第五十条第一項の自動車の点検及び整備に関する実務経験その他について国土交通省令で定める一定の要件は、次の各号のいずれかに該当し、かつ、法第五十三条に規定する命令により解任され、解任の日から二年(前条第一号又は第二号の規定の適用を受けて選任される整備管理者にあつては、五年)を経過しない者でないこととする。
一 整備の管理を行おうとする自動車と同種類の自動車の点検若しくは整備又は整備の管理に関して二年以上実務の経験を有し、地方運輸局長が行う研修を修了した者であること。
二 自動車整備士技能検定規則(昭和二十六年運輸省令第七十一号)の規定による一級、二級又は三級の自動車整備士技能検定に合格した者であること。
三 前二号に掲げる技能と同等の技能として国土交通大臣が告示で定める基準以  上の技能を有すること。

《資格要件の解釈》

1. 点検又は整備に関する実務経験

「点検又は整備に関する実務経験」とは、次の者をいいます。
(1) 整備工場、特定給油所等における整備要員として点検・整備業務を行った経験(行員として実際に手を下して作業を行った経験の他に技術上の指導監督的な経験も含む。)
(2) 自動車運送事業者の整備実施担当者として点検・整備業務を行った経験

2. 整備の管理に関する実務経験

「整備に関する実務経験」とは次の者をいいます。
(1) 整備管理者の経験
(2) 整備管理者の補助者(代務者)として車両管理業務を行った経験
(3) 整備責任者として車両管理業務を行った経験

3. 整備の管理をおこなおうとする自動車と同種類の自動車

「整備の管理を行おうとする自動車と同種類の自動車」とは、「二輪自動車」と「二輪自動車以外の自動車」とに区分されます。

4. 地方運輸局長が行う研修

(1) 選任前研修の目的
整備管理者は、自動車の点検整備等自動車の管理に関する業務を的確に処理する必要があることから、自動車の安全性などを確保するための整備j技術、自動車の管理能力が求められており、整備管理者になろうとするものは、道路運送車両法の法令の基礎的な知識を有していることが必須であることから選任前研修を実施し、これらの知識や能力を具備してもらうことを目的としています。
(2) 選任前研修の内容
選任前研修の内容は以下の通りです。
① 整備管理制度の趣旨、目的
② 整備管理者の業務、権限
③ 点検・整備の方法
④ 整備管理者の関係法令
(3) 選任前研修修了証明書
選任前研修を受講し当該研修を修了した者には、選任前研修修了証明書を交付します。
また、本証明書は全国で使用できますので、細切に保管してください。
なお、整備管理者の選任届出時に選任前研修修了証明書の写しを添付することにより、地方運輸局長が行う研修を修了していることの証明となります。

4. 整備管理者の権限

選任された整備管理者の使命は、いうまでもなく、自動車の点検整備を確実におこなうことにより輸送の安全を確保するとともに、自動車を適切に管理することにより経済的な運行を図り、事業の健全な発展に寄与することです。
このため、自動車の使用者は、整備管理者が職務を的確に遂行できる体制を整備し、その職務を遂行するうえで必要となる権限を与えなければなりません。
具体的には法令に次のように規定されています。
なお、整備管理者は自動車の使用者から与えられた権限に基づき、業務処理規定(整備管理規定)を定め、これに従い業務を実施することが必要です。

道路運送車両法施行規則

第三十二条 法第五十条第二項の規定により整備管理者に与えなければならない権限は、次のとおりとする。
一 法第四十七条の二第一項及び第二項に規定する日常点検の実施方法を定めること。
二 前号の点検の結果に基づき、運行の可否を決定すること。
三 法第四十八条第一項に規定する定期点検を実施すること。
四 第一号及び前号の点検のほか、随時必要な点検を実施すること。
五 第一号、第三号又は前号の点検の結果必要な整備を実施すること。
六 第三号の点検及び前号の整備の実施計画を定めること。
七 法第四十九条第一項の点検整備記録簿その他の点検及び整備に関する記録簿を管理すること。
八 自動車車庫を管理すること。
九 前各号に掲げる事項を処理するため、運転者、整備員その他の者を指導し、又は監督すること。
2 整備管理者は、前項に掲げる事項の執行に係る基準に関する規程を定め、これに基づき、その業務を行わなければならない。

5. 整備管理者の責任

整備管理者は、自動車の使用者から「自動車の点検・整備及び自動車車庫の管理」に関する事項を処理するため必要な権限が与えられ、これらの職務の執行責任者として業務を実施するわけですから、仮に整備管理者が職務を怠り自動車の点検整備に係る事故が発生した場合は、整備管理者が直接的に責任を負うことになります。
なお、自動車の使用者は、整備管理者を選任した後においても常に整備管理者の職務及び自動車の点検整備が適切に実施されるよう注意と監督をすべき責任があります。
また、地方運輸局長は、整備管理者が道路運送車両法等に違反した場合には、自動車の使用者などにたいして整備管理者の解任を命ずることができることになっています。
このようなことから、整備管理者は、職務の重要性と自己の責務を十分認識し、その職務を的確に遂行する必要があります。

道路運送車両法

(解任命令)
第五十三条 地方運輸局長は、整備管理者がこの法律若しくはこの法律に基く命令又はこれらに基く処分に違反したときは、大型自動車使
用者等に対し、整備管理者の解任を命ずることができる。

まとめ 整備管理者の責務