「特別積合せ」と「一般積合せ」の違い― 現行制度で必要な許可と、旧制度の名残りについて ―

トラック輸送は、荷主のニーズや輸送量に応じて多様な形態が存在します。
その中でも「積合せ運送」という言葉は広く知られていますが、制度上は
特別積合せ、一般積合せ、特定積合せ
といった似た表現が登場するため、実務の現場では混乱が起こりやすい部分でもあります。
この記事では、
「現在の制度で何が必要なのか」
「古い資料にある“特定積合せ”とは何か」
「特別積合せは一般事業者にも関係あるのか」
といった疑問を、できるだけ分かりやすく整理して解説します。
行政書士として実務に携わる中でよく受ける質問を踏まえ、運送会社が“今”必要な許可だけを明確にしていきます。
目次
1. まず押さえるべき前提
積合せ運送と聞くと、多くの方が「荷物を混載して運ぶ運行形態」とイメージされると思います。
この理解は間違っていませんが、制度上は
- 昔あった区分(特定積合せ)
- 今も存在する区分(特別積合せ)
- 一般貨物で自由にできる積合せ(一般積合せ)
が混在しており、用語だけが一人歩きしている状態です。
特に、旧制度に基づく許可名称が資料や契約書に残っているケースでは、
「うちは特定積合せの許可も必要なの?」
といった質問を受けることがあります。
結論から言うと、現在の制度では“特定積合せ事業”という許可は存在しません。
2. 【特定積合せ】とは何だったのか(旧制度の話)
平成15年(2003年)以前、貨物自動車運送事業法には、現在とは異なる事業区分が存在していました。
その中に、
- 特定貨物自動車運送事業
- 特定貨物利用運送事業
という区分があり、特定品目や特定区間に限定した運送形態として、
特定積合せ
という考え方が使われていたのです。
当時の制度では “特定の範囲に限定した積合せ運送” に別の許可が必要でしたが、制度改正に伴い、この区分は完全に廃止 されています。
つまり、現在の運送会社は「特定積合せ」を気にする必要はありませんし、
古い資料に残っているだけの“過去の遺物” といって差し支えありません。
3. 【特別積合せ】は現在も存在する
では “特別積合せ” はどうでしょうか。
これは現在も制度として残っている区分で、ヤマト運輸、佐川急便、西濃運輸、福山通運のように、全国規模のターミナルと幹線便を持つ事業者が取得する特殊な許可です。
一般の運送会社が目指す領域ではなく、
- 全国ネットの路線便
- 毎日決まった時間に走る幹線輸送
- 大規模な仕分けセンター
が前提となるため、事実上 大手向けの許可 です。
中小運送会社がこの許可を必要とする場面は、まずありません。
4. 【一般積合せ】は一般貨物の範囲で自由にできる
では、多くの運送会社が行っている“混載輸送”はどう扱われるのか。
これは、一般貨物自動車運送事業の許可だけで自由に行えます。
荷主が複数であろうと、積合せであろうと、ルート配送であろうと、
一般貨物の許可があれば何の問題もありません。
運送会社自身が車両を持ち、自社便で輸送する限り、
“積合せの可否”に関係する追加許可は一切不要です。
5. 利用運送で積合せする場合はどうなるか
「荷主から運送責任を受け、他の運送会社に輸送させる」
つまり 利用運送 を行う場合は、
第一種貨物利用運送事業の登録 を取得すれば合法に行えます。
こちらも、積合せの形態によって許可が分かれるわけではなく、
一般の利用運送として扱われます。
6. 実務でよく誤解されるポイント
現場で質問されることが多いのは次の点です。
●(誤解)積合せ運送をする場合、特別積合せや特定積合せが必要
→ 不要
一般貨物の許可だけで問題なし。
●(誤解)利用運送で積合せを扱う場合は別途の許可が必要
→ 不要
第一種利用運送の登録があればOK。
●(誤解)混載便を広域で運ぶと特別積合せになる
→ ならない
特別積合せは「全国路線網+ターミナル」を持つ巨大事業者向け。
7. 【図解】一般貨物でできる積合せ運送のイメージ
一般貨物の許可さえあれば、積合せは以下のように自由に行えます。
荷主A ─┐
├── 混載(積合せ) → 配送先①
荷主B ─┘
荷主C ─┐
├── 混載(積合せ) → 配送先②
荷主D ─┘
複数荷主の荷物を効率よく積み合わせ、ルート配送することは
一般貨物の範囲内で完結 します。
8. 【判断フローチャート】許可が必要になるか
次のフローチャートで判断すれば、ほぼ迷いません。
① 自社トラックで運ぶか?
→ YES:一般貨物の許可があればOK
② 荷主から運送責任を受け、他社に運ばせるか?
→ YES:第一種貨物利用運送の登録でOK
③ 全国路線網を構築し、ターミナルを多数持つ計画はあるか?
→ YESの場合のみ「特別積合せ」という概念が関係する
一般の運送会社にとって、③に該当するケースはほぼありません。
9. 実務で必要なのは “たった2つ”
制度の歴史や用語の複雑さとは裏腹に、
現行制度で運送会社が押さえるべき許可は非常にシンプルです。
✔ 一般貨物自動車運送事業(許可)
✔ 第一種貨物利用運送事業(登録)
この2つを取得していれば、
積合せ・混載・利用運送・実運送の全てを適法に行えます。
10. まとめ
特定積合せはすでに廃止、特別積合せは大手路線会社専用。
一般積合せは一般貨物の範囲内で完全に実施できます。
制度上の整理は複雑に見えても、
“現在必要な許可は何か”
という問いに対する答えは驚くほどシンプルです。
運送会社として検討すべきは、
①自社で運ぶのか、②利用運送として受託するのか
この2点だけ。
どちらであれ、一般貨物の許可と第一種利用運送の登録があれば、事業は適法に成立します。
実務で迷う場面があれば、制度の背景も含めて柔軟にサポートいたします

