2026年開始!特定荷主が必ず行うべき4つの義務と実務ポイント

2026年4月より、物流の適正化とドライバーの労働環境改善を目的とした「特定荷主制度(物効法)」 が本格的に始まります。
年間で大量の貨物を取り扱う荷主企業は「特定荷主」として指定され、以下の4つの義務が新たに課されることになります。

  • 特定荷主の届出
  • CLO(物流統括管理者)の選任
  • 中長期計画の策定
  • 年1回の定期報告

本記事では、これらの内容を 現場でもすぐ理解できるように、行政書士としての実務目線も交えてわかりやすく解説します。


【1】特定荷主の該当基準

次のいずれかに該当する企業は「特定荷主」となります。
■ 第一種荷主

  • 年間取扱貨物量が 9万トン以上

■ 第二種荷主

  • 保有車両台数が150台以上

■ 連鎖化事業者

  • 大規模な物流連鎖を行う事業者

※出典:国土交通省 自動車局
「物流の適正化・生産性向上に関する有識者検討会」資料より
(特定荷主制度関連審議会資料)


【2】特定荷主に課される4つの義務


① 特定荷主の届出(2026年5月末まで)

特定荷主に該当すると、
年間取扱貨物量の算定結果と根拠資料を届出する必要があります。
【届出のポイント】

  • 出荷数量・契約数・積載量×運行回数など、算定方法は複数あり
  • 根拠資料を提出し、5年間保存
  • 初回提出期限は 2026年5月31日(予定)

② CLO(物流統括管理者)の選任

特定荷主に指定された企業は、全社的に物流改善を統括する責任者として CLO(Chief Logistics Officer) を選任します。

【CLOに求められる要件】

  • 経営判断に関与できる立場(専務・常務・本部長クラス)
  • 改善計画の実行・調整を指揮できること
  • 複数事業所の兼任は可能
  • 外部登用も委任状があれば選任可

提出期限は 特定荷主指定後6か月以内


③ 中長期計画の策定(2026年10月末)

次に、積載効率化や荷待ち時間の短縮など、
今後3~5年の改善を目指す計画書を作成 します。

【計画書に必須となる内容】

  • 現状の把握(積載率、荷待ち時間、荷役時間)
  • 改善目標(数値化が原則)
  • 改善のための施策
  • 対象施設(荷待ち・荷役測定のサンプリング対象)
  • 改善困難な理由(任意記載)

提出期限は 2026年10月末 になる見込みです。


④ 定期報告(毎年7月末)

毎年度、4月~翌3月までの取り組み結果をまとめ、
翌7月末までに報告書を提出 します。

【報告内容】

  • 取組状況(積載率改善、荷待ち時間短縮など)
  • 荷待ち・荷役時間の測定結果
  • 成果と課題
  • 次年度計画に向けた改善点

【3】荷待ち・荷役時間の測定(サンプリング)のやり方

特定荷主制度の中心にあるのが、荷待ち・荷役時間の「サンプリング調査」 です。
国交省は以下の要件を示しています。


✔ 要件① 年間取扱量の多い施設から選ぶ

→ 原則、上位の施設から順に優先して測定。


✔ 要件② 全体の取扱量の50%以上をカバーする

例:

  • A倉庫:5万トン
  • B倉庫:3万トン
  • C倉庫:1万トン

A(必須)+B(追加で精度UP)=80% → OK。


✔ 要件③ 荷待ち・荷役が実際に発生する施設が対象

→ ほとんど待ち時間がない倉庫は対象外でよい。


✔ 要件④ 四半期ごとに「5日以上」測定できる施設

→ 計測が困難な施設は外して問題なし。


✔ 要件⑤ 改善余地のある施設

→ 中長期計画の内容と整合するように選定する。


【4】CLOが担う役割

CLOは単なる名義貸しではなく、企業全体の物流改善を統括する責任者 です。

【CLOの主な業務】

  • 年間取扱量の把握
  • 対象施設の選定
  • 中長期計画の策定と進捗管理
  • 荷待ち・荷役時間の調査指示
  • 運送会社との調整
  • 定期報告の確認・承認

経営層に近い立場だからこそ実行できる内容ばかりです。


【5】行政書士が支援できるポイント

特定荷主制度は複雑で、企業単独で整備するのはかなりハードルが高いです。
行政書士として支援できる内容は以下のとおりです。

  • 特定荷主該当判定(年間取扱量の算定表作成)
  • CLO選任届の作成
  • 中長期計画書の作成代行
  • 荷待ち・荷役時間調査の設計
  • 定期報告書の作成
  • 審査・行政対応

◎まとめ

特定荷主制度は、荷主企業の物流改善を強制力をもって推進する重要な制度です。
2026年の本格実施に向け、対応を早期に始めることが求められます。

※本記事は、国土交通省 自動車局「物流の適正化・生産性向上に関する有識者検討会」および関連審議会資料に基づいて作成しています。