【運送業リスク対策 第1回】行政処分とは何か?

〜運送業専門行政書士の島岡が、基礎からやさしく解説〜

こんにちは。
運送業専門行政書士の島岡です。
運送業に関わる方にとって「行政処分」という言葉は、どこか重く感じるものかもしれません。
でも行政処分の本質を知っている方は意外と多くありません。

この記事では、一般の読者の方にも理解していただけるように、
行政処分の基礎と、巡回指導との違い(誰が来るのか、目的は何か)を、
私の経験も交えてやわらかく解説していきます。


行政処分は「会社を懲らしめるもの」ではない

行政処分と聞くと、“罰” や “ペナルティ” の印象が強いと思います。
しかし行われる背景には、明確な目的があります。

行政処分の本来の目的

  • 事故を防ぐための改善
  • 危険運行の早期是正
  • 運行管理体制の立て直し
  • 事業者間の公平確保
  • 社会全体の交通安全

つまり行政処分は、
「安全に戻るためのストッパー」
であり、
“危ないところがあるので、ここで一度改善しましょう”
という国からの強い警告なのです。
会社を潰すための制度ではありません。


行政処分の種類

行政処分にはいくつかの段階があり、違反内容に応じて重さが変わります。

【1】指導・警告
改善すれば終了する最も軽いレベル。

【2】自動車の使用停止(車両停止)
特定の車両を一定期間動かせない処分。

【3】事業停止(営業所停止)
営業所単位で運送業務ができなくなる重い処分。

【4】許可取消
事業そのものが継続できなくなる最も重い処分。

処分内容は“感覚”ではなく、
国の行政処分基準に基づいて機械的に決まることがポイントです。


行政処分はどう決まる?

行政処分の重さは主に次の2つで決まります。

① どんな違反か(危険度)
例)点呼未実施・過労運転・整備不良・過積載、など。

② 事故の重大さ
死亡事故や重傷事故があると、処分が一気に重くなります。

つまり
「危険度 × 違反の組み合わせ」
で処分レベルが決まる仕組みです。


特に影響が大きい“事業停止”と“車両停止”

● 事業停止(営業所停止)

営業所全体で運送ができなくなる処分で、

  • 全車両運行停止
  • 番号標返納
  • 車検証返納
  • 荷主への説明
  • 人員調整
  • 売上への影響大

“営業所のシャッターが閉まる”イメージです。


● 車両停止

特定の車両だけを止める処分。

  • ナンバー返納
  • 車検証返納
  • 洗車・整備も不可
  • 別車両でのやりくりが必要

台数が少ない会社ほど影響大です。


行政処分独特の「処分日車」というルール

行政処分には「処分日車(しょぶんにっしゃ)」という独特の計算方法があります。
簡単に言うと、
止めなければならない車両×日数の合計
を表します。

例:60日車

  • 1台 → 60日停止
  • 2台 → 30日
  • 3台 → 20日

というように、台数で割って停止日数が決まります。
(このあたりは第3回でじっくり解説します)


巡回指導と監査の違い

ここからが「誤解されやすいけど非常に重要な部分」です。
巡回指導監査は、目的も、やって来る人もまったく違います。


● 巡回指導(行政指導)とは

◆ 誰が来る?
トラック協会(各都道府県)の “適正化事業指導員” が行う
(法的根拠:貨物自動車運送事業の適正化事業)
◆ 目的

  • 問題を未然に防ぐ
  • 管理の甘さを気づいてもらう
  • 記録や点呼の改善
  • 初めての事業者にも丁寧にアドバイス

◆ 雰囲気
やさしい“健康診断”。
「この部分直したほうが安全ですよ」という改善指導中心。
行政処分には直結しません。


● 監査(行政処分前の調査)とは

◆ 誰が来る?
国土交通省(地方運輸局・運輸支局)の“監査官(行政職員)”が行う
(根拠:自動車運送事業等監査規則)

◆ 目的

  • 法令違反の有無を確認
  • 事故の背景調査
  • 過去の履歴確認
  • 行政処分が必要かどうかの判断

◆ 雰囲気
“精密検査”。
事故や重大違反時に行われ、処分に直結。
来た時点で会社の状況はかなり深刻です。


巡回指導と監査の違い(一般向けまとめ)

項目巡回指導監査
主体 トラック協会(民間の実施機関)国土交通省(行政)
来る人適正化事業指導員監査官(行政庁の職員)
目的予防・改善処分判断
性質健康診断精密検査
タイミング定期・ランダム事故・通報時など
処分との関係直結しないほぼ直結

【ミニコラム】日本郵便で起きた“許可取消”に学ぶこと

2024〜2025年には、日本郵便の運送許可の一部が取り消されるという前代未聞の処分が全国で報道されました。
主な問題点としては、

  • 点呼の形骸化
  • 安全管理の弱体化
  • 運行管理体制の問題

などが挙げられていました。
これが示す教訓は非常に明確です。

● 大企業でも行政処分は避けられない

行政処分は、
“会社の規模” ではなく“安全管理の中身”を見る制度
ということです。
ちょっとユーモアを入れるなら、
「行政処分は大企業だからといって忖度しない」
そういう制度なんだ、と理解する良い例です。


まとめ

今回の記事では、

  • 行政処分の本質
  • 種類と基礎
  • 処分が決まる仕組み
  • 事業停止・車両停止の影響
  • 処分日車という独特の考え方
  • 巡回指導と監査の違い
  • 誰が来るのか(主体の違い)
  • 日本郵便の事例からの教訓

までをまとめました。
行政処分は“怖いもの”というより、
「安全を守るための制度」 と考えると理解しやすくなります。

次回の第2回では、
事業停止になると何が起きるのか?
を、手続き・現場での対応まで詳しく解説します。
(続く)