【運送業リスク対策 第2回】事業停止で起きること
〜運送業専門行政書士の島岡が“リアルな現場の流れ”を解説〜

こんにちは。
運送業専門行政書士の島岡です。
今回は、行政処分の中でも特にインパクトの大きい「事業停止(営業所停止)」 をテーマに、実際に現場でどのようなことが起きるのかを分かりやすく解説します。
「事業停止って、営業所が止まるってこと?」
「どんな手続きが必要なの?」
「従業員さんはどうなるの?」
「停止期間が終わったらすぐ元通り?」
…といった疑問を持つ方は多いのですが、
実務経験がないと全貌はなかなかイメージしにくいものです。
本記事では、法律の根拠と私の実務経験を交えながら、
“事業停止が発令されてから再開するまでの一連の流れ”
を丁寧に解説していきます。
ユーモアもほんの少しだけ混ぜておきましたので、どうぞ気楽にお読みください。
目次
そもそも「事業停止」とは何か?
まず最初に押さえておくべきは、
事業停止とは「営業所を止める処分」である
という点です。
法律上の根拠は
貨物自動車運送事業法 23条・24条および行政処分基準
にあります。
営業所単位で「運送業務を一切行ってはならない」という処分であり、
停止期間中はその営業所が事業の主体として活動することができません。
つまり、
「その営業所が運送を行ってはいけない。運送の仕事を受けてはいけない」
という状態になります。
“営業所にシャッターが下りる”というイメージが一番わかりやすいでしょう。
事業停止になると何が止まるのか?
では、具体的に「停止期間中に何ができなくなるのか?」という話に移ります。
結論から言うと、
営業所としてのすべての運送業務が停止します。
つまり、
- 運送契約を受けること
- 荷物を預かること
- 運行指示を出すこと
- 運行管理(点呼)を行うこと
- 車両を出発させること
これらすべてが NG になります。
ここで少しだけユーモアを入れると…
「事業停止期間中は“やる気がある”とか“心意気がある”とか、
そういう精神論では一切どうにもならない処分です。」
ということです。
事業停止が始まる直前に起こること
行政処分書が届いた瞬間から、会社は次の準備に追われます。
荷主へ説明
停止期間中は運送ができなくなるため、
荷主(依頼主)へ誠実に説明する必要があります。
ここが遅れると信頼を失うため、非常に重要なステップです。
※第4回で荷主対応の詳しい話を解説します。
運行管理者・配車担当との調整
「どの便が止まるのか」
「どの仕事を他営業所に振替できるのか」
「そもそも振替してもよいのか」
これらを支局と相談しながら決めていきます。
勝手に“別営業所へ完全移管”などを行うと、
「事業停止逃れ」と判断される危険性があるため要注意。
従業員への説明
- 運転者
- 補助者
- 配車係
- 運管
- 整備管理者
など、営業所に所属する従業員へ丁寧に説明が必要です。
とくに運行管理者・整備管理者は別営業所で業務させることの可否を、
必ず 運輸支局と協議のうえで行います。
事業停止の開始日になると何が起きるか
事業停止の初日は、会社側にとって非常に慌ただしい一日になります。
一般的に次のような流れになります。
番号標返納・届出
事業停止期間中は、
- 営業所に所属する全車両の番号標返納
- 車検証の返納
が行われます。
これは “運送業務を行えない状態を確実にするため” の措置です。
番号標を外した車両はもちろん、公道を走ることはできません。
営業所の「運送業としての活動」完全ストップ
停止期間中は、営業所としての業務が完全に止まります。
例えるなら、
「会社の一部屋に、行政から大きな南京錠がかかる」
ようなもの。
従業員の出入りはしても構いませんが、
“運送業務” に該当する行為は一切禁止です。
支局との連絡窓口の一本化
停止期間中は支局から確認連絡が入ることが多く、
会社としても連絡窓口を一本化しておく必要があります。
よくある問い合わせは、
- 停止期間中の点呼記録の扱い
- 車両の保管状況
- 他営業所での代替運行の有無
- 従業員の勤務状況
などです。
事業停止中に「できること」「できないこと」
制度上、停止中の営業所が“どこまで活動できるのか”は非常に誤解が多いポイントです。
以下に整理します。
🔴 【できないこと】
- 運送契約の受注
- 運行指示書の発行
- 点呼
- 運転者を出発させる
- 荷物の預かり
- 営業所間での自由な便の振替(支局協議なしの場合)
- 停止された車両のメンテナンス(例外を除く)
つまり、
「運送を行うための全ての行為」が禁止 されます。
🔵 【できること】
- 書類整理
- 安全教育・研修
- 再発防止計画の作成
- 設備改善の検討
- 営業所の清掃
- 従業員面談
- 支局との協議
要するに、
「運送業務以外の“内部改善”はどんどん進めるべき」
という期間になります。
事業停止期間が終わった後に何が起きるのか
停止期間の終了後、会社は次のステップに移ります。
【1】番号標の再交付・車検証の返却
停止期間が終われば、必要書類を整えて番号標・車検証が返却され、
車両は再び公道を走れるようになります。
【2】運行管理体制の再チェック
支局から指導が入ることもあり、
改善計画がきちんと実施されているかを確認されます。
【3】荷主への報告・業務再開の調整
停止期間中に生じたクレーム対応、
再開後のスケジュール調整など、ここからが本当の意味での「立て直し」です。
事業停止は“終わってからが本番”
実務を支援していると分かるのですが、
事業停止で本当に大事なのは“停止中”ではありません。
一番難しいのは「再発防止の仕組みを本当に動かすこと」
- 点呼体制をどう強化するか
- 勤怠管理をどうするか
- 配車係の教育
- 運行管理者の増員
- 事故後の連絡体制の整備
- ドライバーの安全意識を上げる方法
このあたりは、処分が終わってからこそ真価を問われます。
ユーモアをほのかに入れると、
「事業停止は“強制ダイエット”みたいなもの。
減った体重を維持できるかどうかは、その後の努力次第」
と言えるでしょう。
まとめ
今回は「事業停止とは何か?」を中心に、
- 事業停止の法律上の意味
- 开始前に必要な準備
- 停止当日の流れ
- 停止中にできること・できないこと
- 再開までの手続き
- 再発防止の本当の重要性
までを整理しました。
事業停止は会社にとって非常に重い処分ですが、
正しい対応をすれば再出発のための大きなチャンスにもなります。
次回の第3回では、
“車両停止(使用停止)と処分日車の仕組み”
を、同じく分かりやすく・実務ベースで解説していきます。
(続く)

