【運送業リスク対策 第3回】車両停止と処分日車のしくみ
〜運送業専門行政書士の島岡が、現場感覚でやさしく解説〜

第1回では行政処分の全体像、
第2回では事業停止とは何か、という流れをお伝えしました。
今回は、
車両停止(自動車の使用停止)
そして、運送業ならではと言える
「処分日車(しょぶんにっしゃ)」の仕組み
について、できるだけやわらかく、しかし正確に解説します。
処分日車は最初は“謎の数学”に見えますが、
一度原理を理解すれば難しくありませんので、安心してください。
目次
車両停止とは何か
まず基本の話から。
車両停止(自動車の使用停止)とは、
行政処分として特定の車両だけを動かせなくする措置です。
事業停止のように営業所まるごと止まるわけではありません。
しかし、対象車両については、
- 運行不可
- 番号標(ナンバー)の返納
- 車検証の預託
- 洗車・整備などの移動も原則NG
という、かなりの制約がかかります。
営業所は動いているのに、車両だけ静かに休んでいる――
そんな、ちょっと独特な光景になります。
(※ なぜここまで厳しいかといえば、「止める」と決めた車両が、うっかり動いてしまわないようにするためです。)
車両停止が会社に与える影響
「1台くらい動かなくても何とかなるだろう」と思われがちですが、
実際には影響はもう少し大きめです。
理由はシンプルで、
多くの運送会社は“ギリギリの車両数”で回しているため
です。
1台が使えないだけで、
「代わりの車両をどうする?」
「その便はどう割りつけ直す?」
といった調整が必要になります。
特に繁忙期だと、
「昨日まで普通に動いていた車両が、今日から急に使えない」
という状況に、現場は少しざわつきます。
(もちろん、行政処分である以上、ざわついても止めるしかありません。)
“処分日車”とは何か
ここからが運送業特有の話になります。
車両停止の期間は、「◯日停止」と決まるわけではありません。
正確には、
処分日車(車両 × 日数の合計)
これが決まります。
これは、
「どの車両を」「どのくらい止めるか」
という両方を管理するための仕組みです。
例で見る方が早いので、いきます。
例①:60日車の処分
60日車と聞くと、「60日止めるの?」と思われがちですが、
実際はこういう意味です。
- 1台を60日止めても良い
- 2台を30日ずつ止めても良い
- 3台を20日ずつ止めても良い
つまり、
台数 × 日数 = 60(処分日車)になればOK
という計算式です。
行政処分としてはこれで“同じ重さ”という扱いになります。
例②:会社の規模が大きいほど停止期間が短くなる?
保有台数が多い会社ほど、
処分日車を複数台で割れるため、停止期間自体は短くなります。
これは、
「大企業だから優遇されている」
という話ではありません。
単純に、
全車両に同じ“処分総量”をどう割りつけるか
という計算上の結果
です。
例えるなら、
同じバケツ一杯分の水を「1人で飲む」のか「10人で飲む」のか、
その違いだけです。
内容(バケツ1杯)は同じでも、
割り当て方によって“しんどさ”が変わる、というだけの話です。
事業停止と車両停止の同時処分
行政処分では、
- 事業停止30日
- 車両停止60日車
のように、複数の処分が“セット”で出るケースがあります。
このときのルールは一つだけ。
【重要】必ず、事業停止から先に消化する。
理由は、
- 事業停止中は「営業所が止まっている=車両も全部止まっている」
- その期間、処分日車の一部が自然に“消化”される
ためです。
ここを誤解されている会社も少なくありません。
よくある誤解
誤解①
「車両停止が60日車なら、60日使えないんだね?」
→ 違います。
停止日数は 60 ÷ 指定台数 で決まります。
誤解②
「車両停止中なら洗車くらいはいいでしょ?」
→ 実はこれもNGです。
洗車場までの移動も“運行”に当たるため、
原則一切動かしてはいけません。
現場ではつい忘れがちですが、
意外と重要なポイントです。
現場から見た“リアルな空気”
車両停止処分になると、
現場では次のような空気が漂います。
- 「あの車、今日から止まってるよね?」
- 「この便どう回す?」
- 「代わりの車をどこから持ってくる?」
事業停止ほど深刻ではありませんが、
決して軽い処分ではありません。
“普通に動いていた車が、今日から急に動かない”
というだけで、物流は意外と静かに揺れます。
まとめ
今回のポイントは3つです。
① 車両停止は“特定車両だけを止める処分”
番号標返納・車検証預託・整備不可など、制約は重い。
② 処分日車とは「車両 × 日数の合計」
台数で割ることで停止期間が変わる。
③ 事業停止と併科されたら、必ず事業停止が先
その期間で処分日車の多くが自然に消化される。
行政処分はどれも軽くありませんが、
仕組みを理解することで、
「何を準備しておけばよいか」が見えるようになります。
第4回では、
行政処分が会社経営に与える影響
について、もう少し踏み込んだ話をします。
(続く)

