一般貨物自動車運送事業の許可を取得した後に車庫を新設・移転するときは、土地の広さだけで判断することはできません。
営業所との距離、車両を配置したときの間隔、前面道路の幅員、車両制限令、出入口、土地の使用権原、都市計画法や農地法など、複数の条件を確認する必要があります。
「大型トラックが置かれている土地だから大丈夫」「不動産会社からトラック駐車場として使えると言われた」というだけでは、一般貨物自動車運送事業の車庫として認められるとは限りません。
土地を契約した後で車庫として使用できないことが分かると、物件の変更や申請準備のやり直しが必要になる可能性があります。この記事では、埼玉で一般貨物の車庫を新設・移転する事業者に向けて、契約前に確認したい要件と認可手続を解説します。
車庫の新設・移転・収容能力変更・廃止には変更認可が必要
一般貨物自動車運送事業の車庫に関する次の変更は、原則として事業計画変更認可の対象になります。
- 新しい車庫を設置する
- 車庫を別の場所へ移転する
- 車庫の面積や収容能力を拡大する
- 車庫の面積や収容能力を縮小する
- 車庫を廃止する
営業所の位置変更は、変更内容や区域によって事後届出で取り扱われる場合がありますが、車庫の新設・移転等とは手続の整理が異なります。
営業所も変更する場合は、営業所と車庫をそれぞれ確認し、両者の位置関係や変更後の管理体制を含めて手続を組み立てる必要があります。
営業所の変更については、関連記事「一般貨物運送業で営業所を新設・移転するには?」をご確認ください。
車庫を契約する前に確認したい6つのポイント

1. 営業所との距離
車庫は営業所に併設することが原則です。
営業所と車庫を併設できない場合、埼玉県では営業所と車庫の直線距離が10km以内である必要があります。なお、東京都特別区・横浜市・川崎市では20km以内です。
候補地が決まった段階で、営業所と車庫の具体的な所在地をもとに管轄運輸支局へ確認するのが確実です。
2. 車庫の広さ・車両相互間及び境界との間隔
車庫には、配置するすべての事業用自動車を収容できる広さが必要です。さらに、次の間隔を確保します。
- 車両と車庫の境界との間:50cm以上
- 車両相互の間:50cm以上
土地全体の面積が十分でも、フェンス、建物、電柱、擁壁、植栽、資材置場などによって、実際に車両を配置できる部分が狭くなることがあります。
車検証に記載された車両寸法を基に配置図を作り、必要な間隔を含めて収容できるか確認することが重要です。
詳しくは、関連記事「一般貨物の車庫の広さ・50cm間隔・必要面積」をご確認ください。
3. 前面道路
車庫の前面道路については、単に道路が接していればよいわけではありません。
使用する事業用自動車が車庫へ支障なく出入りでき、前面道路を通行することが車両制限令等に抵触しないことを確認します。
道路管理者が保有する道路台帳や道路幅員証明書などにより、幅員を確認することがあります。現地で測った幅や不動産広告の記載だけでは判断できない場合があります。
4. 車庫の出入口
道路幅員を満たしていても、出入口が狭い、電柱やガードレールがある、隅切りがなく曲がれないなどの理由で、使用する車両が安全に出入りできないことがあります。
出入口の位置と幅だけでなく、車両の全長、全幅、最小回転半径、進入方向、周辺道路の形状も確認します。必要に応じて、実車による進入確認や車両軌跡を用いた検討を行います。
5. 使用権原
車庫として使用する土地について、事業者が使用できる権原を有している必要があります。
自己所有の場合は登記事項証明書等、借りる場合は賃貸借契約書等によって確認します。
関東運輸局の細部取扱いでは、借入れの場合、概ね2年以上の契約期間が基本とされています。契約期間が2年未満であっても、契約期間満了時に自動的に更新される契約であれば、使用権原の裏付けがあるものとして取り扱われます。
契約書の使用目的についても、一般貨物自動車運送事業の車庫として使用できる内容になっているか確認が必要です。
前面道路が私道の場合は、私道を通行するための権原や承認、接続する公道との関係についても確認します。
6. 都市計画法等の関係法令
車庫候補地が関係法令に抵触しないか確認します。
車庫候補地の現況、既存建物・工作物の有無、土地利用の方法などに応じて、農地法、都市計画法、建築基準法、自治体の条例その他の土地利用規制を確認する場合があります。
特に、市街化調整区域や農地を含む土地では、一般貨物の車庫として使用できるか慎重な確認が必要です。土地の登記上の地目だけで判断できない場合もあります。所在地と利用方法を特定したうえで、自治体の担当部署や関係機関へ確認することが重要です。
前面道路は「○mあれば大丈夫」とは限らない
一般貨物の車庫について、「前面道路が何mあれば認可されますか」という質問をよく受けます。しかし、必要な道路幅員は一律ではありません。
確認が必要なのは、主に道路の種類、道路の実際の幅員、使用する車両の幅、道路の形状、車両制限令による制限、車庫への出入りに支障がないか、道路管理者による通行認定等の必要性です。
道路幅員が同じでも、使用する車両の幅や道路条件によって判断が変わります。
詳しくは、関連記事「一般貨物の車庫の前面道路は何m必要か」および「一般貨物の車庫|狭い前面道路と車両制限令・通行認定」で解説しています。
車庫は屋根付きでなくてもよい
一般貨物自動車運送事業の車庫は、必ずしも建物型や屋根付きである必要はありません。
屋外の土地や駐車スペースでも、全事業用自動車を収容できること、車両と境界・車両相互間の間隔を確保できること、他用途部分と明確に区画されていること、使用権原があること、関係法令に抵触しないこと、前面道路と出入口に問題がないこと、営業所との距離基準を満たしていることなどの要件を満たせば、車庫として使用できる可能性があります。
ただし、一般の月極駐車場であれば無条件に使用できるわけではありません。他の利用者との共用状態、区画、契約内容、車両の大きさ、前面道路、関係法令などを個別に確認する必要があります。
契約してから確認では遅い場合がある
次のような理由だけで契約を決めるのは避けてください。
- 土地が広く見える
- 現在も大型トラックが置かれている
- 不動産会社からトラック駐車場として使えると言われた
- 前面道路が広く見える
- 地目が雑種地になっている
- 近隣にも運送会社がある
他社のトラックが置かれていることと、申請する事業者が一般貨物の車庫として認可を受けられることは同じではありません。
契約後に営業所との距離、関係法令、前面道路、出入口などの問題が判明すると、物件の変更や申請準備のやり直しが必要になる可能性があります。
可能であれば、賃貸借契約の締結前に候補地の所在地、面積、前面道路、使用車両、契約条件を確認してください。
車庫を移転するときは旧車庫の解約時期にも注意
車庫を移転する場合は、新しい車庫の要件だけでなく、現在使用している車庫の解約時期にも注意が必要です。
新車庫の認可前に旧車庫の契約を終了し、事業用自動車を適切に収容できない状態になることは避けなければなりません。
新車庫候補地の調査、新車庫の契約、事業計画変更認可申請、認可、実際の車庫移転、旧車庫の契約終了という順序を意識し、契約更新日や解約予告期間がある場合は、認可申請の準備段階から確認しておくことが重要です。
車庫新設・移転の手続の流れ
車庫の新設・移転は、次の流れを基本として進めます。
- 車庫候補地を選定する
- 営業所との距離・関係法令を確認する
- 車庫面積・必要な間隔を確認する
- 前面道路・幅員・出入口を確認する
- 使用権原・契約内容を確認する
- 事業計画変更認可申請を行う
- 運輸支局による審査・補正に対応する
- 認可を受ける
車庫の新設・移転の認可にはどのくらいかかる?
審査期間は、申請内容や補正の有無などによって異なります。
車庫の移転時期が決まっている場合は、候補地の調査や契約確認を含め、余裕をもって準備することが重要です。
特に、前面道路の調査、道路幅員証明書の取得、関係法令の確認に時間を要する場合があります。旧車庫の解約日から逆算するのではなく、新車庫の認可と実際の移転が完了するまで旧車庫を使用できるよう、契約時期を調整してください。
島岡和雄行政書士事務所の車庫認可申請サポート
島岡和雄行政書士事務所では、埼玉県を中心に、一般貨物自動車運送事業の車庫新設・移転に伴う事業計画変更認可申請をサポートしています。
車庫の認可申請:132,000円(税込)~
料金には、車庫の前面道路の確認と幅員証明を含みます。
候補地について、営業所との距離、車庫の面積、必要な間隔、使用権原、関係法令、前面道路、出入口などを確認したうえで申請準備を進めます。
詳しい料金は「各種料金表」をご確認ください。
よくある質問
営業所と車庫は同じ場所でなければなりませんか?
営業所と車庫は併設が原則です。併設できない場合でも、国土交通省告示の距離基準等を満たせば、別の場所に設置できる場合があります。埼玉県では、営業所と車庫の直線距離が10km以内である必要があります。なお、東京都特別区・横浜市・川崎市では20km以内です。候補地が決まった段階で、営業所と車庫の具体的な所在地をもとに管轄運輸支局へ確認するのが確実です。
車庫には屋根が必要ですか?
必ずしも屋根は必要ありません。屋外の駐車スペースでも、収容能力、50cm以上の間隔、区画、使用権原、関係法令、前面道路などの要件を満たせば、車庫として使用できる可能性があります。
車両同士や境界との間隔はどのくらい必要ですか?
車両と車庫の境界、車両相互間に、それぞれ50cm以上の間隔が必要です。土地の面積だけでなく、実際に配置する車両の全長・全幅と、フェンスや建物等を考慮して確認します。
前面道路は何mあればよいですか?
一律に「○m以上」とは断定できません。道路の種類、道路幅員、使用する車両の幅、道路形状、車両制限令などを確認して判断します。必要に応じて道路幅員証明書等を取得します。
土地を契約してから確認してもよいですか?
契約前の確認をおすすめします。契約後に営業所との距離、関係法令、前面道路、出入口等の問題が判明すると、物件の変更や申請準備のやり直しが必要になる可能性があります。
埼玉で一般貨物の車庫新設・移転を検討している方へ
車庫の新設・移転では、土地の広さだけでなく、営業所との距離、車両配置、前面道路、出入口、使用権原、関係法令を一体として確認する必要があります。
特に、物件を契約する前に調査することが重要です。
すでに一般貨物の許可を取得している事業者で、車庫の新設・移転を検討している場合は、候補地の所在地、使用する車両、現在の営業所・車庫の状況が分かる資料をご用意のうえご相談ください。
これから許可を取得する方は、「一般貨物自動車運送事業の新規許可」をご確認ください。
