運輸運輸安全マネジメントとは?一般貨物運送事業者の取組・公表事項・期限を解説【2026年版】

運輸安全マネジメントとは、運送事業者が経営トップから現場の運転者まで一体となり、輸送の安全確保に取り組み、その結果を継続的に改善していく仕組みです。
一般貨物自動車運送事業者には、安全方針や目標の設定、計画的な安全対策の実施、実施結果の確認などが求められます。
また、事業規模にかかわらず、輸送の安全に関する一定の情報を毎事業年度の終了後100日以内に公表する義務があります。
この記事では、運輸安全マネジメントの基本的な考え方、具体的な取組、公表事項と期限、200両以上の事業者に適用される追加義務、巡回指導との関係を解説します。
1.運輸安全マネジメントとは
運輸安全マネジメントは、事故が発生した後の対応だけでなく、日頃から事故防止のための計画を立て、実施結果を評価し、改善を続ける取組です。
重要なのは、運行管理者や運転者だけに安全管理を任せるのではなく、経営トップが主体的に関与することです。
例えば、会社として「重大事故ゼロ」を目標に掲げた場合、その達成に向けて安全教育や事故防止会議を実施し、実施状況や事故実績を確認することが必要です。
2.PDCAサイクルによる安全管理
運輸安全マネジメントでは、PDCAサイクルによる継続的な改善が基本となります。
Plan(計画)
輸送の安全に関する基本方針や目標を定め、達成に向けた計画を作成します。
例えば、重大事故ゼロ、交通事故件数の削減、運転者教育の定期実施などです。
Do(実行)
計画に基づき、安全教育、危険予知トレーニング(KYT)、事故防止会議、ヒヤリハット情報の共有などを行います。
Check(評価)
安全目標の達成状況や、計画した取組の実施状況を確認します。
事故件数や教育記録などを確認し、計画どおりに取り組めたかを評価します。
Act(改善)
評価結果を踏まえ、次年度の安全目標や取組方法を見直します。
計画を作成しただけで終わらせず、実施・評価・改善を繰り返すことが重要です。
3.一般貨物運送事業者が取り組む主な内容
運輸安全マネジメントでは、次のような事項を整理しておくことが大切です。
- 輸送の安全に関する基本的な方針
- 輸送の安全に関する目標
- 目標を達成するための具体的な計画
- 安全教育や事故防止活動の実施状況
- 目標の達成状況
- 実施結果を踏まえた改善内容
例えば、年間の交通事故件数を減らす目標を設定した場合、運転者教育の実施状況や事故発生状況を確認し、必要に応じて教育内容を見直します。
安全方針や目標を掲示するだけでなく、実際の取組につなげることが重要です。
4.輸送の安全に関する情報の公表義務
一般貨物自動車運送事業者等には、貨物自動車運送事業輸送安全規則第2条の8に基づき、輸送の安全に関する情報の公表が義務付けられています。
公表期限は毎事業年度終了後100日以内
公表期限は、毎事業年度の終了後100日以内です。
例えば、3月31日を事業年度末とする事業者の場合、原則として7月9日までに公表する必要があります。
公表方法は、インターネットの利用その他の適切な方法とされています。
ホームページを設けている事業者であれば、安全情報の公表ページを設け、年度ごとに更新する方法が考えられます。
公表した情報は、次年度の情報を公表するまで継続して公表する必要があります。
5.全事業者に共通する3つの公表事項
一般貨物自動車運送事業者等が公表すべき基本的な事項は、次の3項目です。
① 輸送の安全に関する基本的な方針
会社として輸送の安全をどのように確保するかを示します。
例えば、「法令遵守を徹底し、安全運行を最優先する」「経営トップから従業員まで一体となって事故防止に取り組む」といった方針です。
② 輸送の安全に関する目標及びその達成状況
安全目標と、その達成状況を公表します。
例えば、重大事故ゼロを目標としていた場合、対象年度の実績を確認し、目標を達成できたかどうかを示します。
③ 自動車事故報告規則第2条に規定する事故に関する統計
自動車事故報告規則第2条に該当する事故について、事故の種類ごとに件数を整理して公表します。
社内で把握しているすべての軽微な交通事故が、そのまま法令上の公表対象になるわけではありません。
事故統計を作成する際は、自動車事故報告規則に規定された事故の範囲を確認する必要があります。
6.安全情報の公表例
次は、一般貨物自動車運送事業者が公表内容を整理する際の簡単な記載例です。
実際に公表する場合は、自社の方針、事業年度、事故実績などに合わせて作成してください。
輸送の安全に関する基本方針
「当社は、輸送の安全確保を事業経営の最優先事項とし、法令遵守の徹底と交通事故防止に取り組みます。」
輸送の安全に関する目標及び達成状況
対象年度:2025年度
安全目標:重大事故ゼロ
達成状況:重大事故0件(目標達成)
自動車事故報告規則第2条に規定する事故の統計
対象年度:2025年度
自動車事故報告規則第2条に規定する事故:0件
※上記は記載方法を説明するための架空の例です。実際の公表では、自社の対象年度の事故実績を確認し、必要な事項を記載してください。
7.200両未満と200両以上の事業者の違い
一般貨物自動車運送事業者のうち、事業用自動車の数が200両以上となる事業者には、安全管理規程の設定・届出や安全統括管理者の選任などが義務付けられます。
この200両の判定では、被けん引自動車を除きます。
| 項目 | 200両未満 | 200両以上 |
|---|---|---|
| 運輸安全マネジメントへの取組 | 必要 | 必要 |
| 基本的な安全情報3項目の公表 | 必要 | 必要 |
| 安全管理規程の設定・届出 | 200両基準による義務の対象外 | 必要 |
| 安全統括管理者の選任・届出 | 200両基準による義務の対象外 | 必要 |
| 追加の安全情報6項目の公表 | 原則として対象外 | 必要 |
安全管理規程等の届出義務がある事業者は、基本的な3項目に加えて、次の6項目も公表する必要があります。
- 安全管理規程
- 輸送の安全のために講じた措置及び講じようとする措置
- 輸送の安全に係る情報の伝達体制その他の組織体制
- 輸送の安全に関する教育及び研修の実施状況
- 輸送の安全に係る内部監査の結果並びに、それに基づき講じた措置及び講じようとする措置
- 安全統括管理者に係る情報
なお、200両未満であれば運輸安全マネジメントや安全情報の公表が不要になる、という意味ではありません。
8.行政処分を受けた場合の公表義務
輸送の安全に係る一定の行政処分を受けた場合には、毎事業年度の公表とは別に、遅滞なく次の情報を公表する必要があります。
- 行政処分の内容
- 処分に基づき講じた措置
- 今後講じようとする措置
対象となる処分は、貨物自動車運送事業輸送安全規則第2条の8第2項に定められています。
行政処分に関する情報の公表は、通常の年度ごとの公表とは時期が異なります。
処分を受けた場合は、対象となる処分かどうかを確認し、必要な公表を速やかに行うことが重要です。
9.運輸安全マネジメント評価・保安監査・巡回指導の違い
運輸安全マネジメント評価、保安監査、巡回指導は、いずれも輸送の安全に関係しますが、目的や確認内容が異なります。
運輸安全マネジメント評価
国土交通省が、経営トップの関与や安全管理体制の構築・改善状況などについて確認し、評価・助言を行うものです。
個々の法令違反の有無を調べることだけを目的とする制度ではありません。
保安監査
運輸支局等が、法令遵守状況や輸送の安全確保に関する実態などを確認するものです。
違反が確認された場合には、その内容に応じて行政処分等につながることがあります。
巡回指導
適正化事業実施機関が、運送事業者の法令遵守状況や安全管理の取組状況などを確認し、改善に向けた指導を行うものです。
運輸安全マネジメントに関する資料や安全情報の公表状況も確認対象となることがあります。
これらは同じ制度ではありませんが、日頃から安全管理の記録や公表資料を整理しておくことが、適切な対応につながります。
10.運輸安全マネジメントで注意したいポイント
安全目標を作成しただけになっている
安全目標を掲げても、実施結果の確認や改善が行われていなければ、継続的な安全管理にはつながりません。
安全教育や会議の記録が残っていない
安全会議や運転者教育を実施した場合には、開催日、参加者、教育内容などを記録しておくことが重要です。
安全情報を毎年度更新していない
ホームページに安全方針を掲載していても、目標の達成状況や事故統計が古い年度のままになっていないか確認しましょう。
公表対象となる事故の範囲を誤っている
自動車事故報告規則第2条の事故統計と、社内で管理している軽微な交通事故の集計は区別する必要があります。
11.まとめ
運輸安全マネジメントは、一般貨物自動車運送事業者が継続的に輸送の安全性を向上させるための重要な取組です。
経営トップが安全方針を定め、具体的な目標と計画を作成し、実施・評価・改善を繰り返すことが基本となります。
また、輸送の安全に関する情報は、毎事業年度の終了後100日以内に公表しなければなりません。
安全管理規程等の届出義務がある事業者では追加の公表事項も定められているため、自社の事業規模に応じた対応が必要です。
島岡和雄行政書士事務所では、一般貨物自動車運送事業者の運輸安全マネジメント関係書類の作成をサポートしています。
運輸安全マネジメント関係書類の作成:1期分5,500円(税込)
ご依頼をご検討の方は、当事務所の料金案内・お問い合わせページをご確認ください。
平成18年10月から、運輸安全マネジメントの導入に伴う自動車運送事業関係法(道路運送法及び貨物自動車運送事業法)の一部を改正する法律が施行されました。
全ての運送事業者は、経営トップから現場の運転者に至るまで輸送の安全が最も重要であることを自覚し、運輸安全マネジメントにより絶えず輸送の安全性の向上に努めなければなりません。
今回は、そんな運輸安全マネジメントについてわかりやすくお話いたします。
運輸安全マネジメントって何?どういうことをすればよいの?
運輸安全マネジメントは、以下のようなPDCAサイクルで実施しています。
- Plan
- 安全性の向上のための計画を作成し
- Do
- 計画に基づく安全対策を実施して、
- Check
- 実施したことによる効果を評価して、
- Action
- 改善ポイントを整理し、さらに計画を改善し実施する
という手順を継続的に繰り返すことにより、輸送の安全のレベルアップを図ろうとするものです。
具体的な運輸安全マネジメントの実施内容
輸送の安全に関する次の7項目について、取り組みを行うことになります。
- 会社の代表(社長)は輸送の安全の確保に最終的な責任を有することを明確にします。
- 輸送の安全に関する基本手的な方針を策定し、従業員に十分周知させます。
- 2で定めた基本的方針に基づき輸送の安全の確保に関する目標を設定します。
また、輸送の安全に関する目標を達成するための計画を作成します。 - 情報の共有や伝達が確実に行われるようにします。
- 運輸安全マネジメントの実施状況などを事後チェック(評価)し、改善点の有無を検証します。
- 業務の改善を行い、次の目標や計画に反映させます。
- 上記の取組についての記録を適切に管理します。
上記1~7の取組を行った後に事業者は輸送の安全にかかわる情報を公表しなければいけません。
事業者が、毎年度行うこと
- 輸送の安全に関する基本方針策定
- 輸送雄安全に関する目標(例えば事故件数等)及び目標の達成状況
- 事業用自動車の事故に関する情報(総件数及び類型別の事故件数)
等を公表しなければなりません。
輸送の安全に係る処分を受けた場合
事業者が輸送の安全に係る処分を受けた場合は、
- 当該処分の内容
- 講じた措置
- 講じようとする措置
について、随時、公表しなければなりません。
※公表方法としては、会社のホームページへの掲載や、営業所など利用者が出入りする施設での掲示などが考えられます。公表する情報を外部から確認できる状態にしておくことが重要です。
関連記事・サポートのご案内
巡回指導への対応について
運輸安全マネジメントの取組状況は、トラック協会による巡回指導でも確認されます。
当事務所では、巡回指導に向けた帳票類の確認、不足書類の洗い出し、改善方法のご案内などを行っています。
詳しくは、巡回指導サポートプランをご覧ください。
運輸安全マネジメント関係書類の作成について
当事務所では、一般貨物自動車運送事業者向けに、運輸安全マネジメント関係書類の作成をサポートしています。
報酬額やその他の運送業関連手続については、各種料金表をご確認ください。


