一般貨物の巡回指導とは?38項目・評価・事前準備・対策を解説【2026年】

一般貨物自動車運送事業を行っていると、営業所に「巡回指導」の通知が届くことがあります。
「何を準備すればよいのか分からない」
「点呼簿や運転日報は、どこまで確認されるのか」
「評価が悪いと監査になるのか」
このような不安を感じる事業者の方も多いと思います。
巡回指導では、単に帳票が置いてあるかを見るだけではありません。事業計画、帳票類、運行管理、点呼、改善基準告示、運転者への指導、整備管理、健康診断、社会保険、運輸安全マネジメントなど、一般貨物自動車運送事業を適正に運営しているかが幅広く確認されます。
特に注意したいのは、書類を作っておけばよいわけではないという点です。
点呼記録簿、運転日報、出勤簿、運行記録計など、複数の記録を確認したときに実際の運行と矛盾していないかも重要になります。
この記事では、一般貨物自動車運送事業の巡回指導について、38の指導項目、A~E評価、重点指導項目、監査との違い、事前に確認しておきたいポイントまで、運送業専門行政書士が解説します。
巡回指導の通知が届いたら、まず何をすればよい?
巡回指導の通知が届いたら、まず現在の帳票と実際の運用状況を確認します。
不足している帳票があれば整備するとともに、帳票の内容と実際の運用が一致しているかまで確認することが重要です。
例えば、
- 運行管理者・整備管理者の選任や届出
- 営業所・車庫・車両数などが現在の事業計画と一致しているか
- 点呼が適正に実施・記録されているか
- 運転日報が適正に作成・保存されているか
- 拘束時間・休息期間・運転時間が改善基準告示に適合しているか
- 運転者への指導・監督を実施し、記録を保存しているか
- 初任運転者・高齢運転者・事故惹起運転者への特別な指導や適性診断が適正か
- 日常点検・定期点検が適正に行われているか
- 健康診断を適正な時期に受診させているか
などを確認します。
不足しているものがあれば、単に書類を追加するだけではなく、なぜ不足しているのか、今後どのように運用を改善するのかまで整理することが重要です。
一般貨物自動車運送事業の巡回指導とは
巡回指導は、地方貨物自動車運送適正化事業実施機関の適正化事業指導員がトラック運送事業者の営業所を訪問し、法令遵守や輸送の安全確保などについて確認・指導を行うものです。
各都道府県のトラック協会が地方実施機関として指定され、巡回指導などの現場活動を行っています。
一般貨物自動車運送事業の巡回指導では、現在38の指導項目を基に確認が行われています。
また、新規許可を受けた事業者については、通常の巡回指導とは別に早期の巡回指導が行われます。
新規許可事業者については、運輸開始の届出後1か月以降3か月以内に巡回指導を実施する仕組みとなっています。
新規許可を取得した直後だからこそ、運行管理・整備管理・点呼・運転者教育など、許可後に実際の運用が始まってから必要になる体制を整えておくことが重要です。
巡回指導と運輸支局の監査は違います
巡回指導と運輸支局による監査は同じものではありません。
巡回指導は、地方貨物自動車運送適正化事業実施機関が行う適正化事業の一つです。
一方、監査は国土交通省の地方運輸局・運輸支局が貨物自動車運送事業者に対して行う行政上の監査です。
そのため、巡回指導で指摘を受けたこと自体が、そのまま行政処分になるわけではありません。
ただし、「巡回指導だから行政とは関係ない」と考えるのも正確ではありません。
地方実施機関は地方運輸局・運輸支局と連携しており、重大な法令違反や一定の問題が確認された場合には、巡回指導の結果が運輸支局へ情報提供される仕組みがあります。
さらに、D・E評価となった事業所に対する巡回指導の重点化も行われています。
したがって、巡回指導は「監査ではないから気にしなくてよい」のではなく、日頃の法令遵守状況を改めて確認する重要な機会と考えた方がよいでしょう。
巡回指導では何を確認される?38項目を7分野で解説
一般貨物自動車運送事業の巡回指導では、38の指導項目があります。
大きく分けると、次の7分野です。

1.事業計画等
営業所、車庫、休憩・睡眠施設、配置車両数などが、認可・届出を受けている事業計画と一致しているか確認されます。
例えば、
- 営業所の位置を変更した
- 車庫を移転・追加した
- 配置車両数を変更した
- 休憩・睡眠施設を変更した
といった場合、必要な認可申請や届出が行われているかが重要です。
2025年5月からは、巡回指導等によって営業所に配置する事業用自動車の種別ごとの数などについて事業計画違反が確認された場合、貨物自動車運送事業法第8条第2項に基づく「事業計画に従い業務を行うべき命令」の対象となり得る基準も設けられています。
「許可を取ったときの内容」と「現在の営業所の実態」が変わっていないか、改めて確認しておきましょう。
2.帳票類の整備・報告等
事故記録、運転者台帳、車両台帳などの作成・保存状況が確認されます。
また、本社巡回では、事業報告書・事業実績報告書が提出されているかも確認項目となります。
特に運転者台帳は、単に台帳があるだけではなく、選任年月日、運転免許に関する事項、事故・違反歴、健康状態、特定運転者に該当する場合の教育・適性診断など、必要事項が適正に記録されているか確認しておく必要があります。
3.運行管理等
巡回指導の中でも確認項目が多く、非常に重要な分野です。
主な確認事項には、
- 運行管理規程
- 運行管理者の選任・届出
- 運行管理者講習
- 運転者の確保
- 改善基準告示
- 過積載防止
- 点呼
- 運転日報
- 運行記録計
- 運行指示書
- 一般運転者への指導・監督
- 特定運転者への特別な指導
- 適性診断
などがあります。
特に点呼、改善基準告示、運転者教育などは、書類だけではなく実際の運用状況まで確認しておきたい項目です。
4.車両管理等
整備管理については、
- 整備管理規程
- 整備管理者の選任・届出
- 整備管理者研修
- 日常点検
- 定期点検
- 点検整備記録簿
などが確認されます。
トラックだけでなく、使用しているトレーラについても必要な点検・記録が行われているか注意が必要です。
「車検を受けているから大丈夫」ということではなく、法令上必要となる日常点検・定期点検と、その記録・保存が適正に行われていることが重要です。
5.労基法等
就業規則、36協定、労働時間・休日労働、健康診断などが確認されます。
一般貨物自動車運送事業では、労働基準法だけでなく、自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)への対応も重要です。
運送会社では、労務管理と運行管理を完全に切り離して考えることはできません。
運転者の勤務時間、点呼時刻、運転時間、休息期間などを相互に確認しながら管理する必要があります。
6.法定福利
労災保険・雇用保険、健康保険・厚生年金保険について、加入対象者が適正に加入しているか確認されます。
7.運輸安全マネジメント
輸送の安全に関する基本的な方針、目標、計画を作成し、必要な取組みや公表が行われているか確認されます。
運輸安全マネジメントというと大規模な運送会社だけの制度と思われることがありますが、巡回指導では保有車両数にかかわらず確認すべき事項があります。
巡回指導で特に注意したい重点指導項目
38項目のすべてが重要ですが、その中には「重点指導項目」とされているものがあります。
自主点検チェックシートでも、重点指導項目は特に注意すべき項目として区別されています。
例えば、
- 運行管理者の選任・届出
- 改善基準告示に基づく拘束時間等の管理
- 点呼の実施・記録・保存
- 運転者への指導・監督
- 特定運転者への特別な指導
- 特定運転者への適性診断
- 整備管理者の選任・届出
- 定期点検整備
- 健康診断
などがあります。
点呼は「記録だけ」ではありません
点呼については、業務前・業務後・中間点呼の実施方法、執行者、アルコール検知器の使用、酒気帯び・疾病・疲労・睡眠不足の確認、日常点検結果の確認、安全運行のための指示など、多くの事項が関係します。
また、点呼記録簿、出勤簿、運転日報などの関係帳票について、日時や内容に矛盾がないか確認しておくことも重要です。
帳票を「埋める」ことではなく、実際の点呼を適正に行い、その事実を正しく記録することが基本です。
改善基準告示は実際の勤務状況を確認
2024年4月から適用されているトラック運転者の改善基準告示では、拘束時間、休息期間、運転時間、連続運転時間などについて基準が定められています。
巡回指導への対応では、勤務表だけではなく、点呼記録、運転日報、運行記録計なども含め、実際の勤務・運行が基準に適合しているか確認する必要があります。
特に長時間拘束が発生している事業所では、「月間拘束時間だけ収まっているから問題ない」と判断せず、1日の拘束時間、休息期間、運転時間、連続運転時間なども確認しましょう。
巡回指導のA~E評価とは
巡回指導では、原則として38の指導項目について「適」とされた項目の割合によって総合評価が行われます。
評価の目安は次のとおりです。
| 評価 | 「適」とされた項目の割合 |
|---|---|
| A | 90%以上 |
| B | 80%以上90%未満 |
| C | 70%以上80%未満 |
| D | 60%以上70%未満 |
| E | 60%未満 |
ただし、単純に「適」の数だけを見ればよいわけではありません。
重点指導項目に「否」がある場合には、評価分類を1段階引き下げる取扱いがあります。
そのため、「38項目のうち何個できているか」だけではなく、どの項目が不適合なのかを見ることが重要です。
D・E評価や改善報告未提出の場合はどうなる?
「D評価やE評価を取ったら、すぐ監査になるのですか?」
という相談があります。
D・E評価になっただけで、直ちに必ず監査・行政処分になるという説明は正確ではありません。
一方で、D・E評価の事業所については巡回指導が重点化されています。
国土交通省が示している現在の仕組みでは、D・E評価の重点化対象事業者について半年に1回の巡回指導を行い、3回続けてD・E評価となった場合には国へ報告し、監査・処分対象へつなげる仕組みが設けられています。

また、巡回指導後に求められた改善報告を提出しない場合についても、運輸支局へ報告され、監査につながる場合があります。
したがって、重要なのは評価そのものを恐れることではありません。
指摘された事項について原因を確認し、必要な改善を行い、その後も同じ状態を繰り返さない運用に変えていくことです。
巡回指導とGマークの関係
巡回指導とGマーク(安全性優良事業所認定制度)は同じ制度ではありません。
ただし、両者には関係があります。
Gマークの評価項目の一つである「安全性に対する法令の遵守状況」では、地方実施機関による巡回指導の結果が使用されます。
そのため、将来Gマークの取得を考えている事業所にとっても、日頃から適正な運行管理・整備管理を行い、巡回指導に対応できる体制を整えておくことは重要です。
Gマークの取得要件や申請方法については、当事務所のGマーク解説記事で詳しく説明しています。
巡回指導の前に確認しておきたいのは「帳票」と「実態」の両方
巡回指導が近づくと、
「この帳票がありません」
「この様式を作ってください」
という相談を受けることがあります。
もちろん、法令上必要な帳票を整備することは必要です。
しかし、巡回指導対策でより重要なのは、帳票と実際の運用が一致しているかという点です。
例えば、
- 点呼簿と運転日報
- 出勤簿と点呼時刻
- 運転日報と運行記録計
- 勤務時間と改善基準告示
- 運転者台帳と実際の運転者
- 車両台帳と現在配置している車両
- 事業計画と現在の営業所・車庫
などは、それぞれ独立した書類ではありません。
一つの帳票だけを見れば問題がないように見えても、複数の記録を突き合わせることで不整合が分かることがあります。
巡回指導の直前だけ帳票を整えるのではなく、普段から適正な運用を行い、その結果が帳票・記録として正しく残る仕組みにしておくことが重要です。
島岡和雄行政書士事務所の巡回指導サポート
当事務所では、一般貨物自動車運送事業者を対象に、巡回指導に向けた事前確認・改善サポートを行っています。
実際に営業所へ伺い、巡回指導の確認項目を基に、
- 事業計画と現在の営業所・車庫・車両の状況
- 運行管理・整備管理体制
- 点呼記録
- 運転日報
- 運転者台帳
- 改善基準告示への対応状況
- 運転者への指導・監督
- 特定運転者への指導・適性診断
- 日常点検・定期点検
- 健康診断
- その他必要な帳票・記録
などを確認します。
確認の結果、問題や不足が見つかった場合には、どこをどのように改善する必要があるのかを整理します。
必要に応じて、当事務所で対応可能な帳票のひな形等も提供し、巡回指導当日までの準備をサポートします。
私は行政書士になる前、トラックドライバーとして乗務し、その後、運行管理・現場管理にも携わってきました。
現在は運行管理者資格者証(貨物)を取得し、整備管理者選任前研修も修了しています。
巡回指導対策でも、単に「書類があるか」だけではなく、実際の運送現場でその運用ができているかという視点を大切にしています。
許可を取得して終わりではなく、許可後も適正な運送事業を継続できるよう支援しています。
巡回指導サポート料金
巡回指導サポート 55,000円~
営業所の状況、確認する範囲、車両数・運転者数等によって料金が異なる場合があります。
巡回指導立会い 22,000円~
巡回指導当日の立会いは、巡回指導員の承諾が得られ、日程調整が可能な場合に対応します。
監査の立会いは対象外です。
詳しい料金・対応範囲については料金ページをご確認ください。
よくある質問
巡回指導の通知が届いてからでも相談できますか?
対応可能です。ただし、巡回指導までの日数や営業所の状況によって、確認・改善できる範囲が異なります。通知が届いたら、できるだけ早めに現在の状況を確認することをおすすめします。
トラック協会に加入していなくても巡回指導はありますか?
地方貨物自動車運送適正化事業実施機関による巡回指導は、トラック協会の会員向けサービスとして行われるものではありません。トラック協会への加入の有無だけで巡回指導の対象外になるものではありません。
D・E評価になると必ず監査になりますか?
D・E評価になったことだけをもって、直ちに必ず監査になるわけではありません。
ただし、D・E評価事業所への巡回指導は重点化されており、改善報告未提出や3回連続してD・E評価となった場合などには、運輸支局への報告・監査につながる仕組みがあります。
帳票が不足していても相談できますか?
相談可能です。不足している帳票を確認するとともに、帳票だけを整えるのではなく、実際の運用に問題がないかも確認します。
巡回指導当日の立会いも依頼できますか?
巡回指導員の承諾が得られ、日程調整が可能な場合に対応しています。
巡回指導サポートとは別料金となります。
なお、監査の立会いは対象外です。
Gマークを取得する予定がなくても巡回指導対策は必要ですか?
はい。
巡回指導はGマーク取得のためだけに行われるものではありません。
一般貨物自動車運送事業を適正に運営するための法令遵守状況等を確認するものです。
巡回指導は「当日を乗り切るため」だけのものではありません
巡回指導では、一般貨物自動車運送事業を適正に運営するために必要な多くの項目が確認されます。
大切なのは、巡回指導の日だけ書類を整えることではありません。
点呼、拘束時間、運転者教育、車両管理などを日常的に適正に運用し、その結果が帳票・記録として正しく残っている状態を作ることです。
巡回指導の通知が届き、「何から確認すればよいか分からない」「現在の管理方法で問題がないか確認したい」という場合は、当事務所へご相談ください。
運送現場と運行管理の経験を踏まえ、一般貨物自動車運送事業者の巡回指導対応をサポートします。

